民泊の営業日数は条例で変わる|主要自治体の規制一覧と実務対策
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民泊の「年間営業日数の上限」とは、住宅宿泊事業法(以下、民泊新法)が定める年180日を自治体の上乗せ条例でさらに制限できる仕組みのことです。物件選びや収支計画の前に、その地域が何日営業できるかを必ず確認しましょう。
この記事では、条例による日数制限の法的根拠・仕組みから、主要自治体の制限日数の目安、実務上の注意点までを解説します。開業前の物件選定から収益シミュレーションまで、一連の判断材料として活用してください。
なぜ自治体は180日をさらに短くできるのか?
住宅宿泊事業法(2018年施行)は第18条において、自治体が条例で「区域を定め」「期間を定めて」民泊の実施を制限できると明記しています。「住居専用地域での静穏保持」「学校周辺の安全確保」など合理的な理由があれば、年180日の上限をさらに短縮することが認められています。
条例の制限は主に次の2種類に分類されます。
- 区域制限型:用途地域(住居専用地域など)や特定の地区を指定して営業自体を禁止または制限する
- 期間制限型:「月曜〜金曜は不可」「学校の長期休暇期間のみ可」など、曜日・時期で制限する
どちらの規制も重複して適用されるケースがあるため、「用途地域を調べて合法だと思っていたら、さらに曜日制限があった」という落とし穴が生じます。必ず各自治体の窓口またはウェブサイトで最新情報を確認してください。
実質の営業可能日数はいくら?主要自治体の目安一覧
自治体によって年間の実質営業可能日数は大きく異なります。下記の表は2024年時点の制度概要をもとにした目安であり、条例は改正されることがあるため、必ず各自治体の公式情報を確認してください。
自治体 | 制限の主な区域・条件 | 実質営業可能日数(目安) | 制限の根拠 |
|---|---|---|---|
京都市 | 住居専用地域(市街地の大部分) | 約60〜90日(長期休暇期間のみ) | 京都市民泊条例 |
大阪市 | 制限なし(一部地区を除く) | 最大180日 | 民泊新法準拠 |
東京都新宿区 | 住居専用地域(月〜木曜不可等) | 約60〜80日(週末・祝日中心) | 新宿区民泊条例 |
東京都大田区 | 国家戦略特区(特区民泊) | 特区制度適用で日数制限なし(2泊3日以上の滞在要件あり) | 国家戦略特別区域法 |
北海道倶知安町 | 住居専用地域等 | 区域によっては実質ゼロ | 倶知安町民泊条例 |
鎌倉市 | 住居専用地域(平日不可) | 約60〜80日 | 鎌倉市民泊条例 |
福岡市 | 制限なし(一般住宅地は月〜木注意) | 区域・用途地域による | 民泊新法準拠+市条例 |
「実質ゼロ」になるパターンは、住居専用地域で平日営業を禁止した結果、土日祝日だけが可能となり、さらに夏休み・冬休みなどの長期休暇のみに絞られた場合です。計算すると年間数十日以下になることもあります。なお条例の内容は頻繁に改正されます。開業可否診断も活用しながら、必ず最新情報を自治体窓口で確認してください。
50日・30日・ゼロになる3つのパターンとは?
パターン①:約50日(週末+長期休暇型)
住居専用地域で「月曜〜木曜は不可」かつ「通年ではなく夏休み・春休みなどの特定期間のみ」という二重制限が重なるケースです。京都市の一部エリアや、東京都内の住居専用地域に見られます。稼働できる日は土日祝に集中するため、単価を上げることが収益確保の鍵になります。
パターン②:約30日(特定期間のみ型)
条例で「学校の長期休暇期間(夏休み・冬休み・春休みのみ)」に限定されているケースです。年間を通じて計算すると30〜40日程度になります。不動産活用としての民泊は難しく、長期滞在型のゲストハウスや旅館業許可への切り替えを検討する経営者も多いです。
パターン③:実質ゼロ(禁止区域型)
区域指定で民泊新法に基づく営業そのものが禁止されているエリアです。北海道の一部スキーリゾートエリアや、歴史的景観保護地区などで見られます。この場合、旅館業法上の簡易宿所許可や特区民泊への切り替えが選択肢になりますが、それぞれ別の要件があるため、地域の保健所や観光振興課に相談が必要です。
「地図で見る」ときに注意すべき3つの落とし穴
自治体の条例マップや制限区域図をウェブで確認できるケースが増えていますが、実際に使うときには次の点に注意が必要です。
- 用途地域図と条例の制限区域が一致しない:用途地域は都市計画法に基づくもので、民泊条例の制限区域と境界線が異なることがあります。両方の地図を重ね合わせて確認することが必須です。
- マンション管理規約が別途存在する:条例上は営業可能なエリアでも、区分所有法に基づくマンション管理規約で民泊が禁止されている建物は多数あります。条例を調べる前に管理規約・使用細則を確認してください。
- 条例の改正タイミングがある:地図データやまとめ記事は作成時点の情報です。条例は観光政策・住民要望により改正されることがあり、2〜3年前の情報が古くなっているケースもあります。物件取得前には必ず自治体窓口で最新版の条例を確認してください。
収益計画は「実質営業日数」から逆算して立てる
民泊の収益計画で最もよくあるミスは、「年180日で計算して物件を取得したのに、実際は60日しか営業できなかった」というケースです。収益は営業日数に比例するため、実質営業可能日数が3分の1になれば、売上もほぼ3分の1になります。
収益計画を正確に立てるには、次の順番で進めることをおすすめします。
- 対象物件の用途地域・所在区を確認する
- 自治体の条例・制限区域図で実質営業可能日数を確認する
- 地域の平均客室単価・稼働率の目安を調べる
- 固定費(家賃・光熱費・清掃費・プラットフォーム手数料など)と比較する
実質営業日数が確定したら、民泊収支シミュレーターを使って収支の目安を確認するのが効率的です。単価や稼働率を変えながら、損益分岐点を事前に把握しておきましょう。
条例制限が厳しいエリアで取れる現実的な選択肢
民泊新法での営業が難しい場合でも、以下の代替手段を検討できます。ただし、それぞれ別の法令・要件が適用されるため、専門家や行政窓口への相談が前提です。
- 旅館業法(簡易宿所)への切り替え:旅館業法の許可を取得すれば年間営業日数の制限はなくなります。ただし、消防法・建築基準法上の設備要件が加わり、初期費用が増えることがほとんどです
- 国家戦略特区民泊の活用:東京都大田区・大阪府・新潟県・千葉市など特区指定エリアでは、国家戦略特別区域法に基づく「特区民泊」が利用でき、2泊3日以上の滞在要件はあるものの年間日数の制限がありません
- マンスリー賃貸・中長期賃貸への転換:民泊規制の対象外となる30日以上の賃貸に切り替える方法です。収益性は下がる傾向がありますが、安定した収入が見込めます
まとめ
民泊の年間営業日数は、住宅宿泊事業法が定める上限180日を自治体の上乗せ条例でさらに短縮できる仕組みになっています。主要都市のなかでも、制限がない大阪市と、実質60〜90日程度に絞られる京都市・東京都内の住居専用地域とでは、収益ポテンシャルが大きく異なります。
物件選びの段階で「その土地で何日営業できるか」を確認することが、民泊開業の最重要チェックポイントです。条例情報は変わることがあるため、自治体の公式窓口・保健所・観光振興課に直接確認する習慣をつけてください。正確な日数をもとに収支を試算し、無理のない事業計画を立てることが長期的な運営の土台になります。
※本記事は一般的な情報の整理であり、法令・条例の要件や市場の状況は地域・時期・物件により異なります。実際の開業・運営にあたっては、必ず管轄の自治体・保健所・消防署および専門家にご確認ください。
この記事の内容を確認できる公式情報
制度の要件は自治体・時期により異なります。最新かつ正確な情報は、以下の一次情報でご確認ください。
- 民泊制度ポータルサイト(観光庁・厚生労働省)住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出制度
- 生活衛生関係(厚生労働省)旅館業法の許可・衛生基準
- 総務省消防庁消防用設備・防火管理の基準
- e-Gov法令検索法令の条文
監修・執筆
民泊開業ラボ 編集部
民泊開業ラボ 編集部
民泊・小規模ホテルの開業と運営の実務情報をお届けします。
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