収支・経営

民泊行政台帳を競合調査に使う方法|届出住宅データの読み方と空白エリアの見つけ方

2026.07.28

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民泊行政台帳を競合調査に使う方法|届出住宅データの読み方と空白エリアの見つけ方

民泊の競合調査をしようとすると、「どこに・どれだけ物件があるか」を把握するのが最初の壁になります。有料ツールに頼る前に、まず活用したいのが国土交通省が公開している民泊住宅届出情報(行政台帳)です。民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づいて届け出られた全国の住宅情報が無料で閲覧でき、上手に読み解けば競合の密集エリアと空白エリアを見分ける実用的な地図が描けます。この記事では、台帳データの取得方法から数字の読み方、空白エリアの探し方、そして見つけた空白エリアをどう評価するかまでを順に解説します。

民泊住宅届出情報(行政台帳)とは何か

住宅宿泊事業法では、民泊を営む者は都道府県知事(または特定の政令市・中核市の長)に届け出る義務があります。届け出が受理されると、住所・届出番号・事業者の種別(個人・法人)・管理受託の有無などの情報が行政台帳に登録され、原則として一般に公開されます。

国土交通省の観光庁は「民泊制度ポータルサイト」上でこの台帳データを都道府県別に一覧公開しており、CSVやエクセル形式でダウンロードできる自治体も増えています。取得コストはゼロ、更新頻度は概ね月次または四半期ごとです。

ただし、台帳に掲載されるのはあくまで届出受理済みの物件です。旅館業法の簡易宿所、国家戦略特区の特区民泊、農家民宿など別の法令で動いている施設は原則含まれません。調査対象を正しく理解した上で使うことが重要です。

データの取得手順:観光庁ポータルから始める

まず「民泊制度ポータルサイト」(観光庁が運営)にアクセスし、「届出住宅の情報」または「住宅宿泊事業者届出情報」のページを探します。都道府県ごとのリンクが一覧になっており、各都道府県の担当ページに飛ぶ形が一般的です。

  1. 観光庁「民泊制度ポータルサイト」にアクセスする
  2. 「届出住宅一覧」または「台帳公開情報」のページを開く
  3. 対象都道府県のリンクをクリックし、CSVやPDFを取得する
  4. ダウンロードできない場合は各都道府県の観光・衛生担当課に情報公開請求を検討する

自治体によって公開形式・粒度が異なります。市区町村名までわかるケース、住所が番地まで載るケース、事業者名のみでほぼ個人情報が伏せられているケースなど様々です。どこまでの情報が取れるかは都道府県ごとに確認してください。

件数推移の読み方:3つの指標で競合密度を測る

ダウンロードしたデータは「件数の多い・少ない」だけで判断するのではなく、以下の3つの視点で読み解くと競合分析の精度が上がります。

①届出総数と人口・観光客数の比率

同じ「届出100件」でも、年間観光客が数百万人規模の都市と数万人規模の地方都市では意味がまったく異なります。観光庁や各自治体が公表している観光客数・宿泊者数と組み合わせて「観光客100人あたりの届出件数」を計算すると、エリアの供給過多・過少が見えやすくなります。目安として、観光客1万人に対して届出件数が1〜3件程度であれば供給余地があると感じるオーナーが多い傾向にありますが、需要の質(滞在目的・単価帯)によって大きく変わるため、あくまで仮説検証の出発点として使ってください。

②届出の増減トレンド

台帳データは時系列で蓄積されるため、過去数期分を比較することで「今、参入が増えているか減っているか」が分かります。半年〜1年で件数が20〜30%以上増加しているエリアは競合が集中しつつあるサインです。逆に件数が横ばいまたは微減のエリアは、法令規制の強化や需要低下、あるいは他の参入者がすでに撤退を始めている可能性があります。どちらの意味合いかは、後述の「需要側データ」と突き合わせて判断する必要があります。

③管理受託(代行)の割合

台帳には「住宅宿泊管理業者に委託しているか否か」が記載される場合があります。管理委託率が高いエリアは、遠隔地オーナーや副業オーナーが多く参入しているエリアであり、運営品質のばらつきが出やすい傾向があります。裏を返せば、丁寧な運営と差別化戦略があれば評価を上げやすいエリアとも読めます。

空白エリアの見つけ方:4ステップのスクリーニング

競合が少ない「空白エリア」を機械的に見つけるには、以下の4ステップが実用的です。

ステップ1:市区町村単位でデータを集計する

都道府県単位のデータを市区町村コードで集計し直し、届出件数マップを作ります。エクセルのピボットテーブルやGoogleスプレッドシートで10〜15分あれば十分です。届出ゼロまたは1〜3件の市区町村が「候補エリア」になります。

ステップ2:需要側データと照合する

届出件数が少ないからといってそのまま「穴場」とは判断できません。観光客がそもそも来ないエリアである可能性もあります。次の公開データと突き合わせます。

  • 観光庁「宿泊旅行統計調査」:都道府県・市区町村別の延べ宿泊者数
  • 各都道府県の観光入込客統計:無料でPDF公開されていることが多い
  • 国土交通省「観光地点等の入込客数」:観光スポット単位の集客データ

届出件数が少ないにもかかわらず宿泊者数や入込客数が一定規模以上あるエリアが「真の空白エリア候補」です。

ステップ3:既存の宿泊施設との競合も確認する

民泊台帳には旅館・ホテルのデータは含まれません。観光庁の「宿泊施設実態調査」や各自治体が公開する「旅館業営業施設一覧」を使い、ビジネスホテル・旅館・簡易宿所の分布も重ねて確認します。民泊の空白であっても旅館が充実しているエリアでは価格競争が厳しくなる場合があります。

ステップ4:条例・上乗せ規制の有無を確認する

空白エリアには「そもそも条例で民泊が制限されているため誰も届け出ていない」という場合があります。特に住居専用地域での営業日数制限や、特定の曜日・期間の営業禁止などを設けている自治体は少なくありません。候補エリアが絞れたら必ず当該自治体の担当窓口に規制内容を確認してください。条例の内容はウェブサイトで公開されていない場合もあります。開業可否診断ツールを使うと主要な規制項目の確認漏れを防ぐ参考になります。

都道府県別の傾向:エリア特性の大まかな読み方

全国の台帳データを概観すると、届出件数の分布にはいくつかのパターンが見られます。ただし以下はあくまで一般的な傾向であり、最新データは必ず台帳で直接確認してください。

エリア類型

件数傾向

競合調査上の着目点

大都市圏(三大都市圏の中心部)

届出件数が多く、条例による営業日数制限が厳しいケースが多い

稼働可能日数・周辺の競合単価を精緻に確認する必要あり

観光地(京都・沖縄・北海道観光地など)

特定エリアに集中しやすい。シーズン変動が大きい

閑散期の稼働率低下リスクと、集中エリア外の空白を探す余地あり

地方中核都市

届出件数は中程度。ビジネス需要と観光需要が混在

ターゲット客層の明確化が重要。出張需要に着目すると差別化しやすい場合がある

農山漁村・離島

届出件数は少ないが農泊・特区制度が並走していることも

民泊台帳だけでは競合全体像が見えにくい。農泊台帳も併せて確認

収益見通しを試算する場合は、エリアの稼働率・平均単価の目安を組み合わせると現実的な数字が出ます。民泊収支シミュレーターに想定の稼働率と客室単価を入力すると、月次・年次の収支イメージを手軽に確認できます。

台帳データを使う際の限界と補完方法

行政台帳は強力な無料データですが、いくつかの限界も知っておく必要があります。

  • 廃業・取消し物件のタイムラグ:届出を廃止した物件がすぐに台帳から削除されるとは限らず、実際の稼働物件数より多く見える場合があります
  • 稼働率・稼働日数は分からない:届け出ていても実際にほとんど稼働していない物件も含まれます
  • 無届け物件の存在:違法民泊や、旅館業法で動く施設は台帳に含まれないため、実際の競合は台帳より多い可能性があります
  • プラットフォームの掲載状況は別途確認が必要:台帳の届出住宅がAirbnbやBooking.comに実際に掲載されているかどうかは各OTAのサイト上で確認する必要があります

これらの限界を補うには、台帳データをベースにしつつ、OTAの掲載件数・レビュー数・平均評価点を手動でサンプリングする方法が現実的です。特に候補エリアを2〜3カ所に絞り込んだ後は、実際にAirbnbやじゃらんで「そのエリア・同タイプの物件」を検索して稼働状況(直近の予約ブロック状況)を確認することをお勧めします。

まとめ:行政台帳は「仮説を立てる地図」として使う

民泊新法の届出住宅行政台帳は、ゼロコストで使える競合調査の出発点です。都道府県・市区町村単位での件数集計、増減トレンドの確認、管理受託率の読み解き、そして需要側データとの照合という4つのステップで「真の空白エリア候補」を絞り込むことができます。

ただし、台帳データはあくまで仮説を立てるための地図であり、最終判断には条例規制の確認・現地調査・OTAでの稼働状況確認が不可欠です。法令・条例の要件は自治体によって大きく異なるため、候補エリアが絞れたら必ず当該自治体の窓口に確認することを忘れないでください。

公開データを丁寧に読み解く習慣が、競合の少ないエリアで収益性の高い民泊を開業する第一歩になります。

※本記事は一般的な情報の整理であり、法令・条例の要件や市場の状況は地域・時期・物件により異なります。実際の開業・運営にあたっては、必ず管轄の自治体・保健所・消防署および専門家にご確認ください。

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監修・執筆

民泊開業ラボ 編集部

民泊開業ラボ 編集部

民泊・小規模ホテルの開業と運営の実務情報をお届けします。

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