収支・経営

民泊の稼働率30%・50%・70%で年間収支はどう変わる?損益分岐の目安を試算

2026.08.01

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民泊の稼働率30%・50%・70%で年間収支はどう変わる?損益分岐の目安を試算

民泊の収益性は、稼働率によって年間手残りが数十万円から数百万円単位で変わります。稼働率とは、運営可能日数のうち実際にゲストが宿泊した日数の割合を指し、民泊事業の収益を左右する最重要指標です。

この記事では、稼働率30%・50%・70%の3段階を設定し、固定費・変動費を組み込んだ年間収支を試算します。損益分岐点の目安や稼働率を上げるための実践ポイントも解説しますので、開業前の収益計画や既存物件の見直しにお役立てください。なお、試算はあくまで目安であり、物件条件・地域・運営方法によって実際の数値は大きく異なります。開業前には自治体や専門家への確認を必ずおこなってください。

試算の前提条件:物件スペックと費用の設定

比較の前提となる条件を統一します。ここでは「都市部のワンルーム〜1LDK(定員2〜4名)」を想定した一般的な民泊物件をモデルとして使用します。

収益面の前提

  • 1泊あたりの平均宿泊料金:9,000円(繁閑を平均化した設定)
  • 住宅宿泊事業法の年間上限:180泊(住宅宿泊事業法に基づく制限。特区民泊・旅館業法取得の場合は上限なし)
  • 運営可能日数:180日(住宅宿泊事業法の上限に合わせる)
  • OTA手数料:宿泊料金の15%(Airbnb・Booking.comなど大手OTAの一般的な水準)

固定費の前提(年間)

  • 賃料(転貸または持ち家の機会費用として計上):120,000円/月 × 12 = 1,440,000円
  • 各種保険(民泊専用損害保険など):60,000円
  • 通信費(Wi-Fi回線):24,000円
  • 予約管理・サービスツール費:60,000円
  • 消耗品の定期補充(アメニティ・洗剤など):36,000円
  • 固定費合計:年間 約1,620,000円

変動費の前提(1泊あたり)

  • 清掃費:2,500円/回
  • リネン・タオル類の洗濯またはレンタル費:500円/回
  • 水道光熱費(宿泊分):300円/泊
  • 変動費合計:1泊あたり 約3,300円

清掃費は物件の広さや委託先によって異なります。自分で行う場合はコストが下がりますが、時間コストも考慮が必要です。詳細は清掃費シミュレーターで確認できます。

稼働率30%・50%・70%の年間収支一覧

3段階の稼働率ごとに、宿泊日数・売上・費用・年間手残りを計算した結果が以下の表です。

項目

稼働率30%

稼働率50%

稼働率70%

年間宿泊日数

54泊

90泊

126泊

宿泊売上(税抜き目安)

486,000円

810,000円

1,134,000円

OTA手数料(15%)

▲72,900円

▲121,500円

▲170,100円

手取り売上

413,100円

688,500円

963,900円

変動費合計(3,300円×泊数)

▲178,200円

▲297,000円

▲415,800円

固定費合計

▲1,620,000円

▲1,620,000円

▲1,620,000円

年間損益(手残り)

▲1,385,100円(赤字)

▲1,228,500円(赤字)

▲1,071,900円(赤字)

この試算結果を見ると、住宅宿泊事業法の上限(180泊)の範囲内では、賃料を固定費として計上したモデルでは黒字化が困難であることがわかります。これは民泊収支を考えるうえで非常に重要な示唆です。

賃料コストを除いた場合(自己所有・社宅・用途変更済み物件)の収支は?

賃料負担がない物件(自己所有の空き部屋、用途変更済みの物件、すでに別目的で契約している物件の一部活用など)では、固定費から賃料を除いた試算が現実的です。

項目

稼働率30%

稼働率50%

稼働率70%

手取り売上

413,100円

688,500円

963,900円

変動費合計

▲178,200円

▲297,000円

▲415,800円

固定費(賃料除く)

▲180,000円

▲180,000円

▲180,000円

年間損益(手残り)

54,900円(黒字)

211,500円(黒字)

368,100円(黒字)

賃料負担がなければ稼働率30%でも小幅な黒字となり、稼働率50%で年間約21万円、70%で年間約37万円の手残りが見込める計算になります。自己所有の空き部屋活用や、すでに居住コストが別途かかっている物件では、民泊が副収入として機能しやすいことが数字で確認できます。

損益分岐点の稼働率は何%?

損益分岐点となる稼働率は、賃料を含む場合と含まない場合で大きく異なります。賃料を含む場合、住宅宿泊事業法の上限(180泊)の範囲内では単純な損益分岐点への到達が難しく、宿泊単価の引き上げや多室運営、旅館業法取得による稼働日数の拡大が必要になります。

損益分岐点の早見(賃料なしモデル)

固定費(賃料除く)180,000円を、1泊あたりの限界利益(手取り売上 − 変動費)で割ることで損益分岐点泊数が求められます。

  • 1泊あたり手取り売上:9,000円 × (1 − 0.15) = 7,650円
  • 1泊あたり変動費:3,300円
  • 1泊あたり限界利益:7,650円 − 3,300円 = 4,350円
  • 損益分岐点泊数:180,000円 ÷ 4,350円 ≒ 約42泊
  • 180日に対する割合:42 ÷ 180 ≒ 約23%

つまり、賃料負担がないモデルでは稼働率約23%(年間約42泊)が損益分岐点です。賃料を含める場合は損益分岐点が大幅に上昇し、たとえば月10万円の賃料なら年間120万円が追加固定費となり、損益分岐点は約300泊を超えるため、住宅宿泊事業法の上限内では実現不可能になります。

収支のシミュレーションをご自身の物件条件で試したい方は、民泊収支シミュレーターをご活用ください。

稼働率を上げるために実践できる5つの施策

試算で示したとおり、稼働率の違いは年間手残りに直接影響します。稼働率を高める施策を具体的に5つ紹介します。

①ダイナミックプライシングの導入

週末・連休・イベント期間は価格を上げ、平日や閑散期は下げることで予約を取りやすくします。宿泊単価が上がれば、同じ稼働率でも手残りが増えます。OTAが提供する自動価格調整ツールを活用するのが現実的な方法です。

②複数OTAへの同時掲載

Airbnb、Booking.com、楽天トラベル、じゃらんなど複数のOTAに掲載することで、異なる顧客層にリーチできます。チャネルマネージャーを使うと二重予約リスクを管理しながら多チャネル展開が可能です。

③レビュー評価の向上

OTAのアルゴリズムは高評価の物件を上位表示する傾向があります。清掃クオリティの安定、迅速なメッセージ対応、案内文の充実がレビュー向上につながります。ゲストへの案内文はゲスト案内文生成ツールで効率的に作成できます。

④ターゲット層に合わせたリスティング最適化

写真のクオリティ、タイトル、施設説明文を定期的に見直します。ビジネス利用者向けには高速Wi-Fiや作業スペースを強調し、ファミリー向けには広さや調理設備をアピールするなど、ターゲットに合った訴求が効果的です。

⑤長期滞在プランの設定

週単位・月単位の割引プランを用意することで、1予約あたりの宿泊日数が伸び、稼働率の底上げにつながります。清掃頻度も下がるため変動費の抑制にも寄与します。

住宅宿泊事業法と旅館業法:稼働日数制限の違いが収益に与える影響

稼働率の上限を決めるのは運営形態です。住宅宿泊事業法(民泊新法)と旅館業法の簡易宿所では、稼働可能日数のルールが根本的に異なります。

項目

住宅宿泊事業法(民泊新法)

旅館業法(簡易宿所)

年間稼働上限

180泊(一部自治体はさらに短縮)

上限なし(365日営業可)

許可の難易度

届出制(比較的容易)

許可制(設備基準・消防設備など厳格)

収益上限の目安

低い(稼働日数が制限される)

高い(稼働率次第で大幅に増収可能)

初期費用の目安

比較的低い

消防設備・改修費が加わり高くなりやすい

旅館業法の簡易宿所許可を取得すれば、稼働率70%でも年間約256泊(365日×70%)が可能となり、住宅宿泊事業法の上限(180泊)と比べて約130泊多くなります。先の試算モデルに当てはめると、旅館業法取得の場合の年間宿泊売上はさらに大きくなります。ただし、旅館業法の許可取得には消防法に基づく設備基準や建築基準法上の用途変更が必要な場合があり、初期費用・手続き費用が相当額かかるケースもあります。要件は自治体によって大きく異なるため、必ず所管の保健所や自治体窓口に確認してください。

まとめ:稼働率と賃料コストが民泊収益の2大分水嶺

今回の試算から見えてくるポイントを整理します。

  1. 賃料を含む場合、住宅宿泊事業法の180泊制限内での黒字化は単価次第で難しい。宿泊単価の引き上げ、多室展開、旅館業法取得のいずれかが必要になります。
  2. 賃料負担がない物件なら、稼働率23%(年間約42泊)が損益分岐点の目安。稼働率50%以上を目指せば副収入として十分機能します。
  3. 稼働率が10ポイント上がると、年間手残りは5〜10万円程度改善する。複数OTA掲載・ダイナミックプライシング・レビュー改善など、組み合わせることで効果が出やすくなります。
  4. 旅館業法取得による稼働日数の拡大は収益改善の有力な選択肢だが、初期費用と許可要件を事前に確認することが必須。

開業前に自分の物件条件で損益分岐点を計算したい方は、開業費用シミュレーター民泊収支シミュレーターを活用することをおすすめします。また、地域の条例や許可要件については、必ず管轄の自治体・保健所・消防署に相談のうえ、事業計画を策定してください。

※本記事は一般的な情報の整理であり、法令・条例の要件や市場の状況は地域・時期・物件により異なります。実際の開業・運営にあたっては、必ず管轄の自治体・保健所・消防署および専門家にご確認ください。

この記事の内容を確認できる公式情報

制度の要件は自治体・時期により異なります。最新かつ正確な情報は、以下の一次情報でご確認ください。

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監修・執筆

民泊開業ラボ 編集部

民泊開業ラボ 編集部

民泊・小規模ホテルの開業と運営の実務情報をお届けします。

よくある質問

賃料コストを除いた場合(自己所有・社宅・用途変更済み物件)の収支は?
賃料負担がない物件(自己所有の空き部屋、用途変更済みの物件、すでに別目的で契約している物件の一部活用など)では、固定費から賃料を除いた試算が現実的です。 項目
損益分岐点の稼働率は何%?
損益分岐点となる稼働率は、賃料を含む場合と含まない場合で大きく異なります。賃料を含む場合、住宅宿泊事業法の上限(180泊)の範囲内では単純な損益分岐点への到達が難しく、宿泊単価の引き上げや多室運営、旅館業法取得による稼働日数の拡大が必要になります。

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